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「安心して見送れる火葬炉」を求めて(千手院動物霊園様)

新着情報・コラム

本年10月、大阪府堺市にある千手院動物霊園様に、弊社の固定式ペット火葬炉KHY‐1300型を2基ご導入いただきました。
千手院様とは、実は今回が初めてのお取引ではありません。
2018年には、弊社の固定式ペット火葬炉KOT‐0104型をすでに1基ご採用いただいており、長年にわたりご愛顧いただいているお客様です。

同霊園様では、弊社製の火葬炉1基に加え、他社製の固定式ペット火葬炉2基を併用し、計3基体制でペット葬祭業を運営されていました。年間を通じて多くのご依頼を受けられており、「できるかぎりお待たせしない」「安心してお見送りいただける環境を整える」という思いのもと、複数台の火葬炉が活躍していたと伺っております。

しかし運営を続ける中で、ある問題が顕在化してきました。それが「煙」と「すす」の問題です。

他社製火葬炉で生じた課題

運営を続ける中で、他社製ペット火葬炉を稼働させた際に「大量の煙やすすが出る」という問題が次第に目立つようになりました。
ペット火葬は、飼い主様にとって家族との最後の時間です。

といった状況になると、
「本当にここに任せて大丈夫だろうか」
「近隣にも迷惑になっているのではないか」といった不安を抱かせてしまう可能性があります。

飼い主様と従業員の方への配慮

煙や臭いの問題は、飼い主様だけでなく、火葬業務に従事される従業員の方々にとっても無視できない問題です。

など、日々現場に立つスタッフにとっても大きな負担となります。
千手院様は、「飼い主様にも従業員にも、できるだけ負担の少ない環境を用意したい」というお考えから、他社製火葬炉の稼働をやむなく休止されました。

弊社火葬炉への信頼

一方で、既にご導入いただいていた弊社のKOT0104型火葬炉については、

といった点を高く評価いただいておりました。そこで千手院様は、
「他社製火葬炉2基を撤去し、同じ場所に弊社の火葬炉を2基導入することで、安心して使える3基体制を構築しよう」とお考えになり、KHY1300型2基のご導入計画を立てられました。

堺市の条例というハードル

しかし、ここで一つ大きなハードルがありました。
それが、堺市が定める「堺市ペット霊園の設置等に関する条例」の存在です。この条例は、2021年に制定されたもので、ペット霊園やペット火葬施設の設置・運営について、周辺環境や住民の安心に配慮するためのさまざまなルールが定められています。
千手院様は、条例制定以前からペット火葬炉を運営されていたため、「経過措置」による“みなし許可”を受けておられました。

「軽微な変更」とは何か――本件では、この点が重要な検討ポイントとなりました。対象となる条例では、設置場所の変更がなく、処理能力の増加が一定の範囲内であれば、新たな許可ではなく「届出」で足りるという規定(第5条、第18条)が設けられています。

今回の計画では、他社製火葬炉が設置されていた同じ場所に、弊社の KHY‐1300 型火葬炉を入れ替えて設置するという内容であったため、「設置場所の変更はない」と判断されました。しかし一方で、新たに2基の火葬炉を設置することから、処理能力が増加したと見なされる可能性があるのではないかという点が懸念として残りました。
この判断を誤れば、「新規許可が必要」とされ、距離制限などの新たな問題が発生してしまいます。千手院様としても、「本当に届出だけでよいのか」「条例違反にはならないのか」といった不安を抱かれていました。

弊社と弁護士による堺市との折衝

こうした状況を受け、千手院様からのご相談を受けた弊社は、自社の弁護士と連携しながら、堺市の担当部局との協議・折衝に臨みました。
協議の場では、

などを、資料や図面を交えて丁寧にご説明しました。そのうえで、「設置場所の変更がない以上、条例上は“軽微な変更”として届出扱いにできるのではないか」という解釈を、法令の条文に即して確認し、担当ご部署と時間をかけて意見交換を重ねました。
最終的に、堺市のご担当者様からは、設置場所の変更はないため、処理能力の増加に関する懸念はあるものの、条例の規定上は“軽微な変更”に該当し、届出で足りるという判断をいただくことができました。
この結論に至るまでには、単なる「機器の販売」ではなく、条例の趣旨を踏まえながら、法的な解釈と実務上の運用とのバランスを丁寧に確認していくプロセスが欠かせませんでした。

技術的な安心感が後押しした判断

今回の折衝は、あくまで条例の解釈に基づくものですが、弊社としては、堺市様が判断をされるうえで、

といった技術的な安心感も、少なからず評価の材料となったのではないかと感じています。
KHY1300型は、

安定した二次燃焼による高温処理
排気系統の工夫による
臭気の大幅低減
作業者の安全性と
操作性を両立した設計

を特徴としており、千手院様がこれまでお使いいただいていたKOT‐0104型と同様、「見えないところでの環境配慮」に力を入れた火葬炉です。「実質的に環境負荷が小さい装置に入れ替える」という今回の更新計画は、条例の精神にも沿った改善策であり、それが結果として行政側の理解にもつながったのではないか。そう自負しております。

まとめ

今回の千手院動物霊園様へのKHY‐1300型2基のご導入は、弊社にとっても非常に印象深い案件となりました。
条例というハードルがある中で、「それならやめておきましょう」ではなく、「どうすれば法令を守りながら、お客様の望む形を実現できるか」を、弁護士とともに真正面から検討し、行政と誠実に向き合い、解決策を導き出していく。
そのプロセスを通じて、「製造業者」であると同時に「事業のパートナー」でありたいという、弊社の姿勢をあらためて確認することができました。これからも弊社は、「環境に配慮した火葬炉の開発・提供」「条例・法令面での丁寧なサポート」「事業者様・地域・飼い主様にとっての“安心”」を使命とし、ペット葬祭業を営む皆様とともに、より良い送りの場づくりに取り組んでまいります。

千手院動物霊園様、この度は弊社火葬炉をご採用いただき、心より御礼申し上げます。今後とも末永いお付き合いのほど、よろしくお願い申し上げます。