ペットセレモニー(動物火葬)に携わる上で必要な知識のひとつが『骨』。
昨今、各家庭で家族に迎えられる動物達は非常に多種多様になりました。犬・猫にはじまる哺乳類のみならず、鳥類、爬虫・両生類、魚類など様々な種類があります。
それぞれの動物の特製に合わせた火葬を行えるかは、遺骨を綺麗に残すだけでなく、よりご家族様に寄り添ったセレモニーになるかを大きく分けます。
ペットセレモニーにおいて、依頼数の半数を占めるといっても過言ではないのが犬です。
一般家庭における愛玩動物では猫と並び最もポピュラーな家族で、歴史的にも人間と長らく密接に過ごしてきた存在です。
ここで動物葬祭の場でより接する機会の多い【犬】を代表にお骨について触れてみます
【犬のお骨】
犬と一言に言っても、その種別は多岐に渡ります。
チワワ、トイプードル、ミニチュアダックスフントなどの【小型犬】、柴犬、コーギー、スピッツなどの【中型犬】、レトリバー、シェパード、ハスキーなどの【大型犬】。また、チワワやトイプードルなどには標準より更に小型化を重ねた【超小型犬】もあり、逆に土佐犬、グレートピレニーズなどは大型犬を超える【超大型犬】となります。
(種別による骨格差については、次のページにて)
犬種により体の大きさやフォルムにも大きく差がある犬科ですのでお骨自体の大きさや厚み、強度にはそれぞれ個体差があります。
ですが、彼らの身体を日々支えるお骨の構成自体にはそれほど大きな違いはありません。
骨の数は、種別や尻尾の長さにもよりますがおおむね320個程。そのうち収骨において代表的ないくつかを、特性と共に取り上げます。
【頭骨】
数あるお骨の中で、ご家族様が最も意識されるお骨のひとつです。
犬種により形の違いが強く出ますので、生前の面影を感じるご家族様も多く、セレモニースタッフ側も特に気を使って対応したいお骨です。
頭骨は脳を守るためのお骨ですので、硬く厚くなっています。
当然、火の影響も頭骨の内部には届きづらくなっていますので、火葬が順当に進んだ場合、頭骨内部が一番最後まで残ることが多いです。
火葬の際は火の影響を強く受け続け灰化(お骨が灰となり崩れ出す)してしまうのを避ける為、バーナーからより遠い位置で火葬を進めます。
ご家族様にとっては我が子の可愛いお顔のお骨ですので極力綺麗な状態で残してあげたいですが、鼻先は軟骨部が多いことと口腔環境(抜歯や歯周病など)により、脆さは個体で大きく差が開きます。
より早く火葬を終えることは過度な灰化を防ぐひとつのポイントですので、火葬炉の性能はお骨の残り具合を大きく左右します。
燃焼効率の高さは、火葬時間の短縮に直結します。
【顎・歯】
歯は生前から直接目で見ることが出来ていた部位ですので、ご家族様にとっては非常に身近で親しみのあるお骨です。
犬において、特に犬歯の存在は立会収骨の場でご家族様の心を動かす特別な存在感があります。
歯はその中心を象牙質、表面をエナメル質の2層構造になっています。
エナメル質は硬く酸に強い特製がありますが、熱の影響を受けやすく火葬後にひび割れていることは珍しくありません。
年齢が若い子ほど歯は綺麗に残りやすいですが、口腔環境によって差が出やすい為、高齢でも歯磨き習慣などによっては白くピカピカに残ります。
顎は細長い形状の左右の顎骨に歯根が深く刺さっています。
ほとんどの子が左右1枚ずつ顎の骨がありますが、左右が繋がった1枚顎の形もあり、これは全体の約1割以下ほどです。
【喉仏(第二頸椎)】
仏様が合掌してお座りになられている形に見えることから、喉仏(のどぼとけ)と呼ばれます。
頸椎(首の骨)の二番目で、収骨の際セレモニースタッフからご家族様へご説明することも多いかと思います。
頭骨と一緒に最後に骨壺に納めることが多く、中には喉仏だけ分骨される方もおられます。
人間で言う、男性の喉にある出っ張りの事も同じく喉仏と呼ばれますが、これは軟骨が隆起したもので第二頸椎とは全くちがうものです。
【指のお骨】
指骨は、指先から手の甲まで4本のセットになっており、末節骨(指の1番先端のお骨)は動物の種類により形に特徴があります。
末節骨は爪の土台となるお骨の為、形を見たときに生前の面影を感じるご家族も多く、大きさも小振りな為ペンダントやキーホルダーなどで分骨されることの多いお骨です。
また、末節骨に続く中節骨、基節骨、中手骨は細長く小振りでお骨らしい形をしていることから、コンパクトな容器への分骨に適しています。
【尻尾のお骨】
愛犬の感情表現が出やすい尻尾は、ご家族様にとって愛着のあるお骨です。
犬種により長さはそれぞれですが、よりおしり側の仙骨に近いお骨は大きく、尾の先端になるに従い形状は細く小さくスティック状になっています。
仙骨側のお骨は幅があり、ツノが2本づつ生えたような特徴的な形をしています。
ブルドッグ/フレンチブルドッグなど、元々尻尾が短い(巻いている)犬から、コーギー、トイプードル、シュナウザー、ヨークシャーなど人間の手により意図的に短くカットされている犬もいます。
尾の短さによっては、細長いスティック状のお骨はそもそもないこともあります。
スティック状の尾骨は指骨と同様に分骨で用いられることも多く、内臓部から離れている為綺麗な真っ白いお骨になることも特徴です。
【肋骨】
肋骨は細く長いその形状から非常に繊細なお骨です。
胸部を中心にたくさんあるのが特徴で、筋肉の収縮により火葬中自然に折れることもありますが、これも個体差が大きいです。<
【肩甲骨】
背中から肩にかけてある平たくて薄いお骨で、腕骨を支える役割を担います。
比較的大きなお骨なので見分けやすく、動物の種類によりその形に特製が出ます。
薄い形状の為、横向きの姿勢での火葬では体の下側の肩甲骨が割れやすい特徴がありますが、上側は一枚で綺麗に残ることが多く、とても存在感があります。
【背骨・腰骨】
脊椎の流れの中で、頚椎(首)から背骨へ、背骨から腰骨への流れがあります。
背骨の特徴は一本角の形状であることで、この一本角が背中の丸みを作り出しています。
腰骨は左右に二本角が生えた形状で、背骨に比べ大きさも厚みもしっかりとしています。
ミニチュアダックスフントやコーギーなどの胴長の犬種は腰に負荷がかかりやすい為、ヘルニアを持つ子もいますが、その場合腰骨が脆くなっていることもあります。
【足のお骨・腕のお骨】
脚骨は身体のお骨の中でも特に長く、頭骨に並んで火葬後の存在感が強いお骨です。
腕骨は脚骨にくらべやや細いことがほとんどで、どちらも見分けやすいお骨なので収骨時に全体のお骨の配置・流れを意識する指標になります。
犬種にもよりますが骨太のタイプ・華奢なタイプとそれぞれ個性も有り、年齢だけでなく食事や運動など生活習慣の影響もまた出やすいお骨です。
ミニチュアダックスフントはより短足に改良された犬種で、脚骨・腕骨共に非常に短いですが、その分太さがあり衝撃に耐えるカーブした形が特徴です。